熊本県希少野生動植物の保護に関する条例


平成2年12月22日
熊本県条例第61号

(目的)
第1条 この条例は、本県に生息し、又は生育する希少な野生動植物が、本県の豊かな自然環境を象徴する貴重な存在であることにかんがみ、県、市町村、県民等が一体となってその保護を図り、種の絶滅を防止し、これを県民共通の資産として継承することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1)県民等県民、旅行者及び滞在者をいう。

(2)特定希少野生動物絶滅のおそれのある野生動物(その卵を含む。)で知事が指定するものをいう。

(3)特定希少野生植物絶滅のおそれのある野生植物(その種子を含む。)で知事が指定するものをいう。

(4)特定希少野生動植物特定希少野生動物及び特定希少野生植物をいう。

(県の責務)
第3条 県は、特定希少野生動植物を保護するための基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施するとともに、市町村が行う施策の総合調整に当たるものとする。

2 県は、教育活動、広報活動等を通じて、特定希少野生動植物の保護の必要性について県民の理解を深めるよう適切な措置を講ずるものとする。

(市町村の責務)
第4条 市町村は、県が実施する施策に協力するとともに、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、特定希少野生動植物を保護するための施策を策定し、及びこれを実施するよう努めるものとする。

(県民等の責務)
第5条 県民等は、特定希少野生動植物の保護に努めるとともに、県及び市町村が実施する施策に協力しなければならなない。

(特定希少野生動植物の指定)
第6条 知事は、特定希少野生動植物を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村長及び熊本県自然環境保全審議会条例(昭和48年熊本県条例第41号)に基づく熊本県自然環境保全審議会の意見を聴くとともに、その旨を公告しなければならない。

2 前項の規定による公告があったときは、利害関係人は、当該公告の日から2週間以内に 知事に意見書を提出することができる。

3 知事は、特定希少野生動植物を指定するときは、その旨を告示しなければならない。

4 特定希少野生動植物の指定は、前項の規定による告示によってその効力を生ずる。

5 第1項及び前2項の規定は、特定希少野生動植物の指定の解除について準用する。

(特定希少野生動植物保護区の指定)
第7条 知事は、特定希少野生動植物の生息地、繁殖地又は自生地のうち、特定希少野生動植物を保護するために特に必要な区域を特定希少野生動植物保護区(以下r保護区」という。)として指定することができる。

2 前条各項の規定は保護区の指定及びその区域に変更について、同条第1項、第3項及び第4項の規定は保護区の指定の解除について、それぞれ準用する。この場合において、「特定希少野生動植物」とあるのは、「保護区」と読み替えるものとする。

(捕獲又は採取等の禁止)
第8条 何人も、特定希少野生動物(飼養し、若しくは栽培しているもの又は繁殖させたものを除く。)を捕獲し、殺傷し、又は採取してはならない。また、何人も、保護区においては、特定希少野生植物(栽培しているものを除く。)を採取し、又は損傷してはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

 (1)学術研究その他公益上の事由により知事が特に必要と認めて許可した場合
 (2)非常災害のために必要な応急措置として行う場合
 (3)通常の管理行為のうち、特定希少野生動植物の保護に支障を及ぼすおそれがないもので規則で定める場合

2 前項第1号の許可を受けようとする者は、規則で定めるところにより、知事に許可の申請をしなければならない。

3 第1項第1号の許可には、当該特定希少野生動植物の保護のために必要な限度において、条件を付することができる。

4 第1項第2号の行為をした者は、その行為をした日から記算して14目以内に、知事にその旨を届け出なければならない。

(保護区における行為の制限)
第9条 保護区においては、知事の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

 (1)建築物その他の工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
 (2)宅地を造成し、土地を開墾し、その他土地の形質を変更すること。
 (3)鉱物を堀採し、又は土石を採取すること。
 (4)水面を埋め立て、又は干拓すること。
 (5)木竹を伐採し、又は植栽すること。

2 前項の許可には、当該保護区における特定希少野生動植物の保護のために必要な限度において、条件を付することができる。

3 知事は、第1項各号に掲げる行為で規則で定める基準に適合しないものについては、同項の許可をしてはならない。

4 次に掲げる行為については、第1項及び第2項の規定は、適用しない。

 (1)非常災害のために必要な応急措置として行う行為
 (2)特定希少野生動植物の保護に関する事業(以下「保護事業」という。)の執行として行う行為
 (3)法令に基づいて国又は地方公共団体が行う行為のうち、特定希少野生動植物の保護に支障を及ぼすおそれがないもので規則で定めるものは通常の管理行為又は軽易な行為のうち、特定希少野生動植物の保護に支障を及ぼすおそれがないもので規則で定めるもの

5 保護区において非常災害のために必要な応急措置として第1項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から記算して14目以内に、知事にその旨を届け出なければならない。

6 保護区が指定され、又はその区域が拡張された際当該区域内において第1項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定又は区域の拡張の日から記算して6月間は、同項の規定にかかわらず、引き続き当該行為をすることができる。

7 前項に規定する者が同項の期間内に当該行為について知事に届け出たときは、第1項の許可を受けたものとみなす。

(中止命令等)
第10条 知事は、特定希少野生動植物の保護のために必要があると認めたときは、次に掲げる者に対して、その行為の中止を命じ、又は相当の1期限を定めて、原状回復を命じ、若しくは原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとるべき旨 を命ずることができる。

(1)第8条第1項又は第9条第1項の規定に違反した者
 (2)第8条第3項又は第9条第2項の規定により許可に付せられた条件に違反した者

(国の機関等に関する特例)
第11条 国の機関又は地方公共団体が行う行為については、第8条第1項第1号及び第9条第1項の規定による許可を受けることを要しない。この場合において、当該国の機関又は地方公共団体は、その行為をしようとするときは、あらかじめ、知事に協議しなければなら ない。

(報告及び検査等)
第12条 知事は、第8条第1項第1号又は第9条第1項の規定による許可を受けた者に対し、当該行為の実施状況その他必要な事項について報告を求めることができる。

2 知事は、その職員に、第9条第1項の規定による許可を受けた者の当該行為地内に立ち入り、その行為の実施状況を検査させることができる。

3 前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に掲示しなければならない。

(実施調査)
第13条 知事は特定希少野生動植物の指定又は保護区の指定若しくはその区域の拡張又は保護事業の執行に関し、実地調査の必要があるときは、その職員に、他人の土地に立ち入り、標識を設置させ、測量させ、又は実地調査の障害となる木竹若しくはかき、さく等を 伐採させ、若しくは除去させることができる。

2 知事は、その職員に前項の規定による行為をさせようとするときは、あらかじめ、土地の所有者(所有者の住所が明らかでないときは、その占有者。以下この条において同じ。)及び占有者並びに木竹又はかき、さく等の所有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。

3 第1項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

4 土地の所有者若しくは占有者又は木竹若しくはかき、さく等の所有者は、正当な理由がない限り、第1項の規定による立入りその他の行為を拒み、又は妨げてはならない。

(特定希少野生動植物保護監視員)
第14条 知事は、特定希少野生動植物を保護するため、規則で定めるところにより、その職員のうちから特定希少野生動植物保護監視員を命じ、第10条に規定する権限の一部を行わせることができる。

2 前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

(損失の補償)
第15条 県は、第9条第1項の許可を得ることができないため、又は同条第2項の規定により許可に条件を付せられたため損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。

(農林漁業に対する配慮)
第16条 県は、保護区に関する規定の適用に当たっては、当該保護区に係る住民の農林漁業の生業の安定に配慮しなければならない。

(市町村条例との関係)
第17条 この条例の規定は、市町村が、当該地域の実情に応じて、特定希少野生動植物の保護に関し、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。

(援助)
第18条 県は、市町村が行う特定希少野生動植物の保護に係る施策に関し、必要な指導助言その他の援助に努めるものとする。

(規則への委任)
第19条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(罰則)
第20条 第10条文は第14条第1項の規定による命令に違反した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

第21条 次の各号の1に該当する者は、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

(1)第8条第1項又は第9条第1項の規定に違反した者
(2)第8条第3項又は第9条第2項の規定による許可に付せられた条件に違反した者

第22条 次の各号の1に該当する者は、5万円以下の罰金に処する。

(1)第12条第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
(2)第12条第2項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
(3)第13条第4項の規定に違反して、同条第1項の規定による立入りその他の行為を拒み、又は妨げた者

第23条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前3条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。


附則
 この条例は、平成3年4月1日から施行する。

附則(平成4年3月22目条例第29号)
 この条例は、公布の目から起算して30目を経過した同から施行する。


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